ノーコード/ローコードで開発して考えてみました

ノーコード/ローコードで開発して考えてみました

コウノ工房のコウノです。
プログラミングに社会人人生の大半を費やしてきました。令和になっても絶賛コーディング中です。

「プログラミングの専門知識がなくても業務アプリが作れるツール」として、ここ数年でノーコード/ローコードという言葉が急速に注目を集めています。私自身も kintone、UiPath、Shopify など、さまざまなツールを実際に使ってみました。数えると20種類以上は試したと思います。どれも本当に素晴らしく、必要なパーツをドラッグ&ドロップするだけで業務アプリがスイスイ組み立てられます。プログラミングをする必要がないのは言うまでもありません。

例えば、経費申請のフォームを作ったときは、get・postしなくても、予め用意されたテキストフォームやラジオボタンなどをグイグイもってくるだけで完成しました。入力欄や承認フローの基本形は数クリックで作れます。顧客情報を管理するアプリを作ったときは、エクセルシートを取り込むだけで見栄えの良いデータベースに早変わりしました。SQLを投げたりすることもありません。非エンジニアでもアプリ開発ができるという噂も現実味を帯びるレベルになっています。

では、ノーコード/ローコードツールを導入すれば、会社全体の生産性は上がるのでしょうか。

私の肌感覚では、どんなツールを使っても「80%まではすぐにできるが、最後の20%で止まってしまう」という印象です。業務に潜む「独自」や「例外」の壁が大きすぎるのです。先ほどの経費申請フォームで言えば、各項目を横に並べたいとか、金額をマイナスで入れたいとか、謎のコダワリやしきたりが必ずあって導入を拒んできます。SIerとして様々な企業の業務を見てきましたが、例外対応ありきで業務が組まれている企業がほとんどでした。ほかにも、30日締め翌月末払いで請求書を発行するルールでも、別の顧客は60日、特別顧客は即日入金といったように例外となる取引条件がバラバラ存在したり、あるいは、残業申請フローが開発部では課長承認だけで済むのに、営業部では部長と本部長の二重承認が必要、といった部署ごとに違いがあるというのも珍しくありません。

このような業務をローコードツールで吸収しようとすると非常に大変です。なぜならノーコード/ローコードは、あらかじめ用意された機能を組み合わせて使う仕組みだからです。提供されていること以外の機能は使えません。エクセルのマクロのように、もはや、表計算ソフトの域を超えているのでは?というような何でもかんでもできる仕組みはないのです。

もしここで、「利益に直結しない独自業務は捨てる」「システムに業務を合わせる」という判断ができ、みんなが従う風土があれば、この問題は解決します。しかし、それは権限を持つ役職者のみ可能な技であり、現場担当者や情シス担当者が勝手に業務フローを変えることはできません。

さらに厄介なのは、例外業務に限って労働時間の4割に近い時間を占めてしまったり、その業務の支持者がなかなかの上職者だったりして、なかなか説得できなかったりします。結果として「基本部分はノーコード/ローコードでシステム化し、独自部分はアナログや外部処理で対応しましょう」という折衷案に落ち着くケースが大半なのでは?というのが私の結論です。

とはいえ、ノーコード/ローコードが真価を発揮する領域というのも確実に存在します。私の経験から特に効果が高いと感じたのは、次の3つです。

ワークフロー・申請系
稟議、休暇申請、経費精算など「申請 → 承認」の流れが決まっている業務は、ノーコード/ローコードの得意分野です。フォームを作り、承認ルートを設定すれば、紙やメールで行っていたやり取りを一気に効率化できます。代表的なツールは kintone、Power Automate、Airtable です。
社内データ管理・情報共有
顧客リスト、在庫、案件進捗など「一覧で管理するデータ」もノーコードが得意とする領域です。従来Excelで管理していたものをクラウド化するだけで、大きな改善が見込めます。kintone や Airtable は定番ツールです。「現場が独自に作ったExcelを持っている」という問題はありますが、それを統合するだけでも十分な効果があります。いわゆる「脱Excel」はノーコードの代表的テーマです。
ECサイト構築・運営
商品登録、決済、在庫管理といった仕組みがパターン化されているため、ECはノーコードに非常に向いています。小規模ビジネスや新規事業の立ち上げでは特に効果的です。代表的なサービスは Shopify、STORES、BASE など。スピーディにサイトを立ち上げられ、注文管理や在庫更新も自動化できます。一方で「独自の販売ルール」や「特殊な配送条件」には標準機能では対応できないため、割り切りが必要です。

結論として、ノーコード/ローコードは「こだわりを捨ててシステムに業務を合わせられるなら、本当に業務のIT化を実現できる」と言えます。ただし、現実には例外処理や独自ルールが必ず存在し、その最後の20%をどう扱うかが成否を分けます。

ノーコード/ローコードは魔法の杖ではありません。しかし、正しい範囲で使えば確実に効果を発揮します。重要なのは「どの業務をシステム化するか」、「どこまで割り切れるか」を見極めることです。

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コウノ(
職歴年のIT技術者です。エクセル・Web制作が得意。

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