リモートワークを始める前に考えておくべきこと

どうも、コウノ工房のコウノです。
コロナをキッカケにリモートワークを導入しました。
コロナが始まる少し前の2010年前後、乗車率が100%を超える満員の通勤電車にスーツ姿で乗って出社することに疑問を感じる人が多く、起業ブームがあった記憶があるのですが、皮肉なことに、コロナ禍をきっかけに急速に広がったリモートワーク(テレワーク)は、現在も多くの企業で定着しつつあります。就職・転職活動においても在宅ワークの有無が、応募するかどうかの重要ポイントにしている人もいるくらいです。ただし「これから導入したい」「本格的に仕組み化したい」と考えている企業側にとっては、まだハードルが高いテーマかもしれません。
この記事では、企業の管理部門の視点からリモートワークを導入するために必要な準備をまとめました。メリット、課題、始め方を整理し、最後に全体のポイントをまとめます。
リモートワーク導入のメリット
働ける人の幅が広がる(地方・育児・副業層も参加できる)
リモートワークの最大のメリットは「働ける人の範囲が広がる」ことです。通勤が難しい人でも働けるようになるので、これまで採用が難しかった人材を取り込むことができます。
たとえば、地方に住んでいて都市部まで通えない人、子育てや介護をしながら柔軟に働きたい人、スキルを活かして副業をしている人などが候補に加わります。採用母集団が広がれば、人材不足に悩む企業でも新しい戦力を確保しやすくなります。私も子供がいるので、子育てによる事情であれば在宅OKとしてもらえれば、非常にありがたいと思いますし、家庭の事情で役所や金融機関に行かなければいけない用事がある際も在宅ワークができると非常に助かります。
辞めにくくなる、欠員が出にくくなる
柔軟な働き方ができるようになることで、従業員の満足度は高まりやすくなります。「通勤がつらい」、「家庭の事情で退職せざるを得ない」といった理由を減らすことができるからです。結果として離職率を下げられ、欠員リスクを平準化できます。
また、災害や交通トラブルで出社できない場合でも、自宅から業務ができるため、急な穴を埋めやすくなります。特に中小企業では1人の離脱が業務に大きく影響するため、リモートワークはリスク対策としても大きな効果があります。
災害や感染症があっても仕事を止めずに続けられる
新型コロナウイルスの流行で出社が難しくなった経験は、多くの企業にとって大きな教訓となりました。同様に、地震や大雨・洪水などの自然災害によって交通網が麻痺することもあります。
こうした緊急事態でも、リモートワーク環境が整っていれば「事業を止めずに継続できる」体制を維持できます。普段から自宅で働けるようにしておくことで、非常時にも慌てずに対応できるのです。これは企業の事業継続計画(BCP)の観点でも非常に重要な意味を持ちます。
オフィスのコストを減らせる(席数や出社日を最適化できる)
全員が毎日出社する必要がなくなれば、オフィスの席数や出社日を見直すことができます。フリーアドレス制や出社日のローテーションを導入すれば、これまでより小さいスペースでも十分に運用できます。
その結果、賃料・光熱費・通勤交通費などの固定コストを抑えることができます。単なるコスト削減にとどまらず、オフィスの役割を「集まる場」、「創造的な場」として再定義できる点もメリットです。
リモートワークの課題
もちろん、リモートワークには課題もあります。導入にあたっては「見えない」、「守れない」、「伝わらない」の3点に集約されます。
働いている様子が見えにくくなる
出社していれば同僚の様子や態度が自然とわかりますが、在宅勤務では「きちんと働いているのか」が見えにくくなります。そのため「仕事をサボっているのでは」と不安に感じる上司も少なくありません。この課題は、働き方ではなく成果で評価する仕組みを整えることで解決できます。勤怠打刻や在席のステータスを最低限ルール化しつつ、最終的には「どんな成果を出したか」で判断する文化に変えていくことが大切です。
情報が外に漏れやすくなる
会社の外からシステムにアクセスするため、情報が漏洩するリスクはどうしても高まります。パソコンの紛失やウイルス感染、意図しないファイル共有などが起きれば、重大なトラブルにつながります。そのため、端末管理・データ管理・権限管理の三本柱を徹底する必要があります。貸与PCを基本とし、暗号化や多要素認証を標準化。データはクラウドに集約してローカル保存を禁止し、アクセス権限も最小限に絞ることでリスクを抑えられます。
コミュニケーションがとりにくくなる
在宅勤務になると、オフィスでの「ちょっといいですか」がなくなります。雑談や偶然の会話が減ることで、連携不足や孤立感が生まれることもあります。この課題には、会議やチャットのルールを意図的に整えることが有効です。目的別に会議体を型化し、チャットは反応速度やタグの使い方を決める。さらに雑談の場を意識して設けることで、孤立感を和らげることができます。
リモートワークの始め方
では実際に導入する際、どんな準備をすればよいのでしょうか。最初のステップは「勤怠ルールを決めること」と「環境を整えること」です。
勤怠ルールを決める
- 対象業務を決める:
まずはリモートに適した業務を選びます。定型業務や個人作業が中心の部門から始めるとスムーズです。 - 就業規則や規程を整える:
勤務場所、指揮命令系統、休憩や中抜けの扱い、費用負担のルールを明文化します。 - 勤怠・在席の運用方法を定める:
出退勤の打刻方法、離席や外出の連絡方法などをルール化します。 - 成果で評価する仕組みをつくる:
作業時間ではなく成果物や目標達成度を重視する評価制度に切り替えると、リモートでも公平に評価できます。
リモートワーク環境を整える
- ITツールを揃える:
会議用(Teams、Zoomなど)、チャット用(Slack、Teams)、ストレージ(Google Drive、Boxなど)を標準化します。 - ネットワーク環境を確認する:
自宅の回線速度や安定性を確認し、必要に応じて会社からモバイル回線を支給することも検討します。 - セキュリティを強化する:
貸与PCの暗号化、多要素認証、アクセス制御、リモートワイプなどを導入します。 - 作業環境を整える:
椅子・モニター・照明などを推奨仕様として提示し、必要に応じて在宅勤務手当や備品貸与で支援します。
こうした基本を整えることで、安心してリモートワークを始めることができます。
まとめ
リモートワーク導入は、「働ける人が増える」、「辞めにくくなる」、「災害時も業務を止めずに続けられる」、「オフィスコストを抑えられる」といった大きなメリットがあります。方で、「働いている様子が見えにくい」、「情報が漏れやすい」、「コミュニケーションが減る」といった課題もあります。これらは勤怠ルール・セキュリティ対策・コミュニケーション設計で対応可能です。
まずは対象業務を絞り、規程を整え、IT環境とセキュリティを最小構成で準備するところから始めましょう。小さく試して、徐々に広げていけば、リスクを抑えつつスムーズに定着させることができます。
リモートワークは単なる働き方の変化ではなく、企業の成長と持続可能性を支える仕組みです。管理部門が率先して準備を整え、安心して働ける環境をつくることが、会社全体の強さにつながります。

