IT業界特有の客先常駐という働き方

システムエンジニア、テクニカルエンジニア、プログラマ。肩書きはいろいろ変わったけれど、振り返ると、ほとんどのキャリアを「客先常駐」というスタイルで過ごしてきた。
この記事は、客先常駐の定義やよくある誤解を整理しつつ、実際に何をするのか、なぜIT業界に多いのか、そして「消耗しやすい条件」を避けるための視点を、体験ベースでまとめたものです。
客先常駐とは
客先常駐とは、ざっくり言えば「クライアント(または元請け)の職場に席を置いて働くこと」です。重要なのは、客先常駐は工程(上流/下流)ではなく、働く場所(勤務形態)の話だという点です。
客先常駐の言い方(よくある呼び方)
- 客先常駐
- 客先勤務/クライアント先勤務
- 常駐SE/常駐エンジニア
- オンサイト(リモートの反対として使われがち)
- 現場(「現場行ってます」など、言葉を省略する文化もある)
呼び方が違っても、実態としては「客先で働く」を指していることが多いです。
「派遣社員ということ?」への答え
ここは混同されやすいのですが、客先常駐という言葉だけでは契約形態は決まりません。同じ「常駐」でも、派遣の場合もあれば、業務委託(準委任)や請負の一部としてオンサイトになる場合もあります。
しんどさが増えやすいのは、ここが曖昧なまま働いてしまうことです。「自分はどの契約で、誰の指示で動いているのか」を理解しておくと、不要な摩擦を減らせます。
新卒でもある?一人常駐もある?
どちらもあります。特に増員や運用寄りの仕事では、比較的早い段階で常駐に入るケースもあります。
一人常駐は、合えば気楽ですが、合わないと孤立しやすいです。相談相手の不在、評価の見えにくさ、判断の迷いが積み重なるので、体制(チームか単独か)は重要なポイントです。
なぜIT業界は客先常駐が多いのか
客先常駐はITに限った話ではありませんが、「客先常駐」という言葉がもっとも定着しているのがIT業界だと思います。背景には、だいたい次のような事情があります。
1. 環境・セキュリティの制約
クライアントのネットワークや機密データに触れる必要があると、オンサイト前提になりやすいです。「社外からアクセスできない」「端末持ち込みNG」など、現地でしか作業できない条件が揃うと常駐は残ります。
2. 調整コストが高い(即レスが価値になる)
仕様調整、確認、承認、関係者とのすり合わせ。こういったコミュニケーションが多いほど、その場にいることでスピードが出ます。結果として「席を置く」ことが価値になります。
3. 工数提供型のビジネスが強い
人(稼働)を一定期間提供するモデルは、現場に人を置くのと相性が良いです。ここは好みが分かれるところですが、「現場が切れないように回す」構造だと、常駐が連鎖しやすくなります。
4. 工程の幅が広い(上流だけ/下流だけではない)
要件定義や設計だけでなく、実装・テスト・運用まで幅広い役割があり、どの工程でもオンサイトが必要になる局面が出ます。客先常駐は、上流専用でも下流専用でもありません。
客先常駐で何をする?(上流だけ?プログラマでもある?)
現場によってやることは本当に違います。要件整理・調整、設計、実装、テスト、運用保守、ヘルプデスクまで幅があります。
上流だけが行く?プログラマでもある?
どちらもあります。要件定義や調整のために上流がオンサイトになるのは自然ですが、実装担当のプログラマでも普通に客先常駐はあります。客先常駐は「工程」ではなく「働く場所」の話なので、上流/下流で線を引くとズレます。
オンサイトの強みは「すぐ確認できる」こと
すぐ相談できる。すぐ確認できる。意思決定者に当たりに行ける。これがオンサイトの強みでもあります。だから、なくならない働き方になっています。
私の場合(SEのときもWeb制作のときもオンサイトだった)
私自身、SEのときもWebサイト制作のときもオンサイトでした。共通して感じたのは「その場にいること自体が価値になる瞬間がある」ということです。一方で、常に“外の人”として振る舞う緊張感もあり、これは好きになれませんでした。
客先常駐のメリット・デメリット
私は客先常駐に否定的です。嫌なことが多かったし、「自社に席がない感覚」は今でも好きになれない。ただ、良い点がゼロかと言われると、そうでもありません。
メリット:業務知識を急速に習得できる
客先に入り込むので、その会社の仕事の流れ、用語、優先順位、事情が生活の一部になります。机上の理解ではなく「現場の空気」を吸って覚えるので、業務知識は速く身につきます。
メリット:現場に認められると一気に楽になる
最初はよそ者扱いです。席もアカウントも権限も、全部借り物から始まる。でも、仕事ができると判断されると相談され、任され、作業が回りやすくなる。「ここにいていい」と思える瞬間が出てきて、体感のしんどさが一段落します。
メリット(番外編):会社行事を断りやすい
これは皮肉ですが、社内イベントや飲み会に巻き込まれにくいことはあります。ただし裏返すと、会社とのつながりも薄くなりやすいということでもあります。
デメリット:所属感が薄い(自社に席がない感覚)
会社員なのに、会社の仲間と働いている感覚が薄い。評価する上司が日常の仕事を見ていないことも多い。育成も相談も本人任せになりやすい。この構造が、じわじわ効いてきます。
デメリット:「無限にやらされる」感じが生まれやすい
案件単位では期限があることが多いのに、会社の稼ぎ方が「常駐で回す」モデルだと、現場が変わるだけで「常駐→次の常駐」になりやすい。これが無限ループの正体だと思います。
客先常駐に常駐する平均期間
正直、「平均」という数字はあまり意味がありません。現場によって幅がありすぎるからです。体感としては次のレンジに収まることが多いです。
- 短期:1〜3ヶ月(増員、火消し、繁忙期)
- 中期:6〜12ヶ月(フェーズ単位)
- 長期:1〜3年(運用、情シス支援、大規模案件)
- さらに長期:現場固定(席として定着)
長期化しやすいのは運用保守や情シス系など、「終わりが作りにくい」仕事です。
客先常駐は有休を使いやすい?休みはある?
結論から言うと、休みはあります。ただし、取りやすさは現場によって差が出ます。
- 取りやすい:ルールが整っている/常駐メンバーがチーム扱い/代替が効く
- 取りにくい:人数がギリギリ/忙しさが慢性化/属人化している
「客先だから休めない」というより、「体制が弱い現場だと休みにくい」というほうが実感に近いです。
客先常駐は別途手当が出る?
会社によります。常駐手当が出るところもあれば、出ないところもある。交通費・精算の扱いもバラバラで、ここは入る前に確認しないと後でモヤモヤします。
- よくある論点:常駐手当の有無、交通費、精算幅(上下)、残業の扱い
- 地味に効く論点:客先都合の早出・遅出、出張、端末・備品の扱い
消耗しないための見分け方(最低限のチェック)
客先常駐が合わない人は、合わないなりの戦い方があります。まずは「消耗する条件」を避けるのが現実的です。
求人・面談で聞いておきたいこと
- 常駐比率はどれくらいか(客先と社内の割合)
- 帰社日はあるか(週1/月1/ゼロ)
- 案件の平均期間と、最長期間の実例
- 案件は選べるのか(希望はどの程度通るのか)
- チーム常駐か、一人常駐か
- 評価者は誰か(現場評価はどう反映されるか)
- リモート比率(フルオンサイト前提か、ハイブリッドがあり得るか)
「無限ループ」になりやすいサイン
- 帰社日がほぼない
- 案件の説明が雑、または直前まで分からない
- 評価基準が「稼働しているか」「問題を起こしていないか」中心
- 自社内のコミュニティや育成の仕組みが弱い
全部が当てはまるわけではありませんが、いくつも重なると「現場が変わるだけでずっと常駐」になりやすいです。
まとめ
客先常駐は、IT業界で特に定着している働き方です。上流だけの話ではなく、プログラマでも普通にあります。そして、良い面がゼロではない一方で、所属感の薄さや評価の見えにくさなど、消耗しやすい構造も持っています。
もし客先常駐が合わないと感じるなら、「常駐の有無」だけで判断するよりも、帰社日、体制、評価、案件の決まり方など、条件を細かく見ていくほうが現実的です。私自身は否定的ですが、同じところで消耗する人が減るなら、それが一番いいと思っています。

