VBAは需要がありますか?

オワコンの定義を先に決める
「オワコン」は人によって意味が違います。この記事では、次の3つに分けて考えます。
- 製品として終了する(サポート終了・廃止)
- 仕事が消える(求人・案件が極端に減る)
- 第一言語としての投資効率が落ちる(学習のリターンが限定的)
このうちVBAは、(3) に当てはまる場面が増えた一方で、(2) はまだ残っている、という整理が現実に近いです。
VBAエンジニアは存在する
VBAを主戦場にしている人、求人、案件は実際にあります。特にExcel運用が中心の現場では、「既存マクロの改修・保守」「手作業の自動化」「周辺アプリ連携」「属人化した仕組みの整理」といった仕事が成立します。
ただし、肩書きが「VBAエンジニア」でも、仕事内容は“言語の新規開発一本”というより、業務理解・運用設計・保守性がセットで評価されることが多いです。
VBAが「オワコン」と言われる理由
セキュリティの都合で「増やしづらい」
近年、組織がマクロを敬遠する最大の理由はセキュリティです。便利でも「マクロは禁止」「申請制」「署名必須」などで導入が重くなり、“配布して終わり”ではなく運用と統制を含めた設計が必要になります。
これはVBAが技術的に終わったというより、現場で通しづらくなっているという意味で“オワコンっぽく見える”状態です。
クラウド中心だと、別の選択肢が前に出る
VBAはデスクトップ版Officeで強い一方、クラウドや共同編集の文脈では、別の自動化手段(例:Office Scripts 等)が語られやすくなりました。ここも「VBAが死ぬ」というより、環境が変わると推される手段が変わるという話です。
周辺技術の変更が運用に効いてくる
長く使われる仕組みほど、周辺の前提が変わったときにメンテナンスが必要になります。「VBAそのものが終了する」ではなく、関連要素の変更が運用コストに影響するという意味で、現場は保守性や置き換えの判断が重要になります。
それでもVBAが残り続ける理由
Excel中心の業務が根強い
取引先からの受領データがExcel、社内の集計・照合・帳票がExcel、「最後はExcelで提出」という文化が残っている限り、Excelの中で動く自動化は需要が消えにくいです。
既存資産が大きく、置き換えコストが高い
VBA資産は、仕様書が薄いまま長年回っていることが多く、置き換えには業務の再定義・例外パターンの洗い出し・利用者教育・運用ルール整備などが必要です。コードだけを書き換えて終わりになりにくいので、「当面は保守する」「段階的に移行する」という判断になりやすいです。
現場の最短距離になりやすい
デスクトップExcel前提の部署では、VBAが最短で効果を出すことがあります。今日から使える、ファイル1つで配れる、手順を大きく変えずに改善できる。この「短期で効く」性質は、廃れにくい理由のひとつです。
VBAの需要が強い領域と弱い領域
需要が強い(残りやすい)
- 既存マクロの改修・保守
- 集計・照合・帳票など、Excel運用が中核の業務
- 部門ツール(EUC)としての小さな自動化
- Excel+周辺(文書出力・メール・ファイル運用)を含む効率化
需要が弱い(減りやすい)
- クラウド前提で、デスクトップ利用が限定的な組織
- マクロが原則禁止で、例外承認が通りにくい組織
- 正本データ管理までExcelで回している台帳運用(脱Excelの対象になりやすい)
VBAを第一言語として目指しにくい理由
ここが結論に直結します。VBAエンジニアは存在するが、第一言語として専門性を突き詰めて目指す対象ではない、という判断が成立しやすい理由は次の通りです。
- 守備範囲がOffice内に寄る
成果は出るが、汎用的なソフトウェア開発の文脈に横展開しづらい。 - 市場価値がVBA単体で決まりにくい
要件整理、運用設計、保守性、配布、引き継ぎなどがセットで評価されやすい。 - 運用制約(セキュリティ・クラウド化)の影響を受けやすい
“書ける”より“通せる・回せる”の比重が上がり、VBAだけの深掘りがリターンに直結しにくい。
つまり、専門性を伸ばすなら「VBAを極める」より、 業務改善の設計力(壊さない設計・例外処理・統制・移行判断)を伸ばす方が安定しやすい、という結論になります。
生成AI時代にVBAスキルはどう変わるか
生成AIがVBAコードを出せるようになったことで、「書く」コストは下がります。 一方で、現場で価値が残るのは次の領域です。
- 動かす:環境差、参照設定、権限などを含めて実行できる状態にする
- 壊さない:例外処理、データ破損回避、バックアップ設計
- 配る:マクロ制限、署名、配布フローを理解して運用に乗せる
- 直す:他人やAIが書いたコードを読んで修正できる
- やめる判断:置き換え・移行・段階的廃止の線引きをする
生成AIの普及でVBAが不要になるというより、 「VBAを書ける」価値が相対的に下がり、「運用に乗せられる」価値が上がる方向になりやすいです。
今から学ぶならどこまでやるべきか
現場で最短で成果を出したい場合
- 基本文法(変数、If、For、関数)
- Worksheet/Rangeの操作
- CSV/ファイル操作
- エラー処理(最低限)
- 処理速度の基本(画面更新・計算・配列の考え方)
ここまでで、実務の改善には十分戦えます。
キャリアの主戦場を広げたい場合
VBAを入口にするのはありですが、一本足にしない方が良いです。次のどれかを足すと、仕事の幅が増えます。
- データ整形(Power Queryなどの思想も含む)
- SQL(抽出・集計の基礎)
- 自動化基盤(RPAやワークフロー)
- クラウド寄りの自動化(Office Scriptsの位置づけ理解)
結論:VBAは用途限定で現役、ただし一本足は推奨しない
淡々とまとめると、VBAは「終わった技術」ではなく、現場で効くが、主役であり続けるのは難しくなってきた技術です。
VBAの仕事は残ります。ただし「VBAを増やせる会社」は、セキュリティやクラウド化の流れの中で減りやすい。だから、VBAを第一言語として“それだけ”突き詰めるより、業務改善・運用設計・置き換え判断まで含めて専門性を作る方が長期的に安定しやすい、という結論になります。

